テレワークでリオデジャネイロに1カ月滞在することになり、Airbnbで滞在先を探す。目星を付けていたアパートには予約が入ってしまい、第2候補の選択肢に落ち着く。この時はこれから矢部太郎さん著「大家さんと僕」のような生活が待ち構えているとは想像もしなかった。
コロナ禍で供給過剰の状態
世界的な観光地リオデジャネイロと言えども、コロナの影響は避けきれず、観光客数の落ち込みからAirbnbは供給過剰のような状態だ。以前住んでいたレブロン地区のアパートの一室を間借りするタイプで、1カ月約7万5,000円の場所に決めた。ビーチまでも2ブロック歩いて3分ほどの距離で、以前住んでいたアパートは道路を挟んだ向かい側のため、土地勘もある。
長期滞在には便利なAirbnbだが、このご時世、海外からの旅行者を受け入れるとなると、神経質になる家主がいるのも当然。予約した段階で、ワクチンの接種状況、出発前のPCR検査等について説明すると、あっさりと予約を受け付けてくれた。
家主は80歳のおばあちゃん
到着までに何度かAirbnbとWhatsappでメッセージのやり取りを交わす。いずれのプラットフォームに使用されている家主の顔写真からは、50歳から60歳くらいの方に見受けられた。
アパートに到着すると、家主が温かく迎え入れてくれた。が、失礼な話だが写真の印象とは異なり、もう少しお年を召されているような感じだ。おまけに、動作も幾分、スローテンポ。もちろん、何歳ですか?と直接尋ねるわけにもいかず…。
探りを入れるため、コロナ禍での旅行は大変で、感染のリスクがあるから家主も旅行者もちょっと神経質になってしまう。特に、家主が高齢者だと、気を付けなければならないというような話をすると、「私は80歳だけど、もうワクチンの2回接種を済ませた上、コロナにも1度かかったから大丈夫」ということだ。何?この方80歳のおばあちゃんだったの?
想定外に高齢だったため、こちらが心配になるくらいだったが、家主のおばあちゃん自ら大丈夫と言っているので、ありがたく滞在させてもらおう。
4LDKのアパートに1人暮らし コロナで引っ越しできず
3人のお孫さんのいる家主さんだが、ご主人に先立たれたため、4LDKの大きなアパートに1人暮らし。以前は、交換留学生に部屋を貸していたこともあるが、最近はAirbnbで時折、旅行者を受け入れているのみという。
室内の簡単なオリエンテーションを受ける。それにしても、4LDKに1人暮らしだとスペースが有り余る。トイレだけで3つもあるし。さすがに家主さんご自身もこの家は広すぎるということで、引っ越しを考えていたが、コロナのせいでなかなか身動きが取れないということだ。
家具や調度品、絵画の中には赤いシールが貼られており、それらは引っ越し先にも持ち運ぶものという意味だそうだ。引っ越し前に友達に盛大な送別会もしてもらったのに、まだ居るの?と時折、友達からからかわれてしまうと苦笑いの家主さん。
この時点で薄々感づいていたが、よくしゃべる。おしゃべり好きなブラジル人なので当然かもしれない。その上、普段一人暮らしだと、話し相手が少なくなるので、旅行者が来たときにはこの機会ぞといわんばかりのマシンガントークだ。
リオデジャネイロを離れてから5カ月余り。ポルトガル語を使用する機会も減っていたというか、ほぼなかったので早速、リスニング力の回復に一役買ってくれそうだ。
オリンピック・パラリンピックで昼夜逆転の生活に
リオデジャネイロに滞在していた8月から9月にかけては丁度、東京オリンピック・パラリンピックの真っ最中。スポーツ観戦が趣味のおばあちゃんは、オリンピックは毎回、多くの競技を観戦するということだ。前回のリオデジャネイロオリンピックの際は、水泳やビーチバレーを会場に足を運んで観戦したそうで、自国開催の思い出に感傷的になっていた。
いくつになっても好きなことに時間を使えることはよいことだが、今回のオリンピック・パラリンピックの問題点は、日本とブラジルの12時間に及ぶ時差。
夕方から夜にかけて実施される競技は、ブラジルでは明け方から早朝ということになる。実際に、おばあちゃんの生活リズムは昼夜逆転しており、夕方くらいになって、「昨日というか今日はあの競技が盛り上がって寝たのが朝8時だった」と眠そうで顔を話すこともしばし。
時折、夕方や夜になってもおばちゃんの部屋の扉が締め切ったままになっているのをみると、何か起きたのではないかと心配になることもあった。本人曰く、見逃せない競技の前には、夕寝をして観戦に備えていたとのことだ。(つづく)