アートで溢れるキャンパス、世界遺産カラカス大学都市-ベネズエラ

ベネズエラ

日本人の海外旅行の目的の1つ、世界遺産訪問。“世界遺産”という響きにこれほど魅了されるのは日本人旅行者の特徴といっても過言ではない。TBSの世界遺産の番組を筆頭に、旅番組でも必ずといっていいほど世界各地の名所や自然、歴史建造物などの世界遺産が紹介され、それを訪れることが旅の目的化されているのかもしれない。

ベネズエラには3つの世界遺産が登録されており、そのうちの1つが2001年に登録されたカラカス大学都市。そのメインキャンパスとなるベネズエラ中央大学の卒業生でもある同僚にお願いして、美術館を彷彿とさせるようなアートとモダン建築の空間が広がる大学へ案内してもらう。

勉学のインスピレーションを掻き立てる壁画

ユネスコの世界遺産である大学のキャンパス

週末ということで授業はお休み。いくら世界遺産とは言え、部外者がキャンパス内に立ち入ってもよのもか躊躇するが、この大学の卒業生である同僚によれば、問題ないという。

ということで、駐車場に車を停めて早速キャンパス内の散策をスタート。

社会人経験を経て大学院で学んでから、もうかれこれ10年近い月日が流れた。改めて大学のキャンパス内に足を踏み入れるのは色々な思い出が蘇るとともに、新鮮な気分。

曲線が近未来とノスタルジーが交わる空間に溶け込む

駐車場から見えたキャンパスの外観は、お世辞にも建物の維持管理が行き届いているとは言えず、これが本当に世界遺産なのかと疑問を抱きたくなったのが第一印象。しかし、その印象を覆すかのように、いざ建物の中に入ると、70年代くらいのノスタルジー溢れる空間に、曲線の構造が近未来をも彷彿させ、異なる時代が交わるような空間。

木のぬくもりが伝わるホールのチケット売り場 
キャンパス内に施された壁画

広々とした空間を見渡すと、目に飛び込んでくる壁画。ジョアン・ミロの色使いを彷彿とさせるような作品。

別の方角には、先住民族のアートのようなモザイク画。美術館のようなアートが大学内に点在する。こんな環境なら、レポートやプレゼンに重い詰まったり、何かアイデアが必要になったりした際に、インスピレーションを与えてくれそう。こんな環境で、勉学に励める学生は何と恵まれたことか。

大学院時代はさすがに勉強に励んだとそれなりに胸を張れるが、学部時代は勉学は二の次。海外旅行とアルバイトに明け暮れていたので、こんな環境で大学生活を送れてたら、もう少し学びにも身が入ってたかもしれないと想像する。

もちろん在学中に何年も通い詰めていたら、こうしたアートや凝ったデザインも見飽きるかもしれないが、それでも陳腐な校舎で学ぶよりは遥かに良いだろう。実際に、卒業生の同僚はアート溢れるキャンパスの空間をとても誇りに思っているようだ。

自然との調和も取れたキャンパス

キャンパス内の大木

キャンパス内のあちこちに点在するアートに目を奪われがちになるが、芸術作品と同じくらい緑豊かな空間に、自然との調和も実に計算された敷地と感じさせられる。

母校の日本の大学は、山の中にあったけれどもキャンパス内は桜の木くらいしか記憶にない。

アート作品からのインスピレーションに加えて、大木から溢れる生命力にも勉学を後押ししてもらえそう。

木で組まれた時計台

緑の空間にうまく溶け込むように、時計台も木で組まれ、自然の一部のような演出。

近年は経済苦境に悩まされるベネズエラだが、かつては石油資源をもって南米随一の経済力を誇った時代もあった。豊かな時代に設計された建築物は、予算の制限とは無縁の凝りに凝ったデザインに、文化が隆盛していたと想起させられる。

キャンパス内には銅像を始めいくつものオブジェのアートも点在する

キャンパス内を歩いていると、自然の中に調和するデザインが凝らされた建物に目を奪われるが、それ以外にもキャンパス内にはあちこちに銅像を始めオブジェも点在する。

女性がうずくまるような姿の銅像の前を通り過ぎた際、何気にそのオブジェに手を触れると、同僚から「触っちゃダメ!」と注意を受ける。

特に注意書きもなかったし、作品が柵で囲まれているわけでもなかったのに、一体どうしてだろう。

この同僚によると、この銅像に触れると十分な単位が取れず卒業できないという迷信があるようで、無事に晴れの卒業を迎えたときに、この銅像に触れるのが習わしなのだという。

棟のつなぎ目の部分
ドアの取っ手にもデザインが施されている

ベネズエラの首都の中心部に位置するカラカス大学都市。アクセスもそれほど困難ではないので、ベネズエラの世界遺産を知るために訪れてみる価値はあるだろう。

現在のベネズエラの経済状況を考慮すると、決して十分に管理が行き届いているとは言えないが、単なる学びの場を越えて、アート空間のキャンパスが、後世に受け継がれていくことを願う。

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