前回のアパートの内見後、心移りするようなアパートは現れなかった。同じ週のうちに、オーナーに連絡を取り、契約を依頼した。この時点で7月の第2週目。8月から入居するまでまだ時間があると高をくくっていたが、甘かった。
内見の約束の時は驚くほど素早く対応してくれたので、このオーナーに対する期待値が勝手に上がっていた。しかし、その後、音沙汰なし。8月まで10日余りを残した時点でもう一度連絡。すると、色々立て込んでいて…と。今日中に契約書を送ると言われてからまた数日連絡が途絶える。
契約書の到着を待ちぼうけ
さすがにこうなると悠長に構えていられない。その後は、毎日のようにワッツアップでメッセージを送り続け、8月まで残すところあと1週間の時点で契約書が送られてきた。
ブラジルで働いていた時は、職場の顧問弁護士が契約書の文面をチェックしてくれたが、いまの職場にはそのようなサポートは全くなし。よって、ざっと目を通して自分が不利になりそうな項目がないかチェック。念の為、職場の同僚にもダブルチェックを依頼。
同僚のアドバイスから契約書を一部書き換えてもらうことを依頼。7月27日の出来事。残された時間は刻々と過ぎていく。書き換えを依頼した契約書の改訂版が送られてきたのが、7月29日。文面上は問題なし。
無事に契約合意かと思えば、文書に署名した上、公証役場のようなところで署名証明の手続きが必要とのことだ。コロンビアでの家探しの最後の関門となることを願おう。
契約書のプリントアウトにも一苦労
まずプリンターがないので、契約書をプリントアウトできないというところからスタート。複合機が常設されている日本のコンビニが恋しくなる。コピー屋さんは近くにあったが、USBからプリントアウトするサービスは実施していないとのことだった。
テレワークのため、職場のプリンターを使うこともできず。近くに住んでいる友達にあたると、プリンターを持っているではないか。運気が上向いてきた。早速、家にお邪魔するも、なぜかプリンターが不調で印刷できず。失意のまま引き上げる。
家までの帰途、上司に明日、プリンターを使用するために職場に向かう許可を得ようか、オーナーに事情を話して、契約書の署名を少し待ってもらうか、考えを巡らせる。名案が浮かばないまま、帰宅。
部屋について携帯がwifiに接続されるや、さきほど訪問した友達からメッセージ。なんでも「君が去った、まさにその瞬間にプリンターが動き出した。プリントアウトできているからいつでも取りに来ていい」と、文面からも興奮が伝わってきた。
最後のプロセス署名の証明
翌7月30日。家の近くの公証役場へ。8時の受付開始数分前に到着。すでに4、5人が列を成していた。時間通り、8時に門が開くと、1人のおばさんが携帯電話で話しながら門を足早に通過していく。すると、待っていた人から、順番を守りなさいと警告。電話相手に夢中になっていたおばさんもバツが悪そうに、最後尾に回った。こういうところ、コロンビアのモラルはきちんとしている印象を受ける。
役場はこぢんまりとしていて、受付番号札のような近代的なシステムもなく、並んでいた順番通りに手続きを済ませていく。署名の証明を依頼すると、身分証明書を渡して、手続きの間に手数料の支払いを指示される。
最後の数日、バタバタしていたため、手続きにお金が必要なことまでに気が回らなかった。慌てて所持金をチェック。300円ほどしかない。いくらかかるか不明だが、不足の場合は家に帰る最悪のシナリオも覚悟。幸い費用は200円弱ほどで済み、手続き時間も20分ほどで完了。
鍵が開かない!
約束通り、12時に契約書を持ってアパートにオーナーを訪ねる。契約まではすったもんだで色々待たされたけど、時間通りに待機してくれていた。
共有玄関の鍵の開け方を一緒に実践し、部屋の中へ。スタジオタイプなので特に広いわけではないが、掃除は一通り済ましておいたとのことだった。内覧の時に確認した外れた網戸は直しておくとのことだったが、そのままの状態で放置されていた。すぐに担当の修理に直させるということだが、いつになることやら。
契約書を手渡し、手続き終了。ラテンの世界はいつもハラハラさせられるけど、結局最後はどうにかなるというこのスリル。このスリルを楽しめるか、あるいは達観して状況を見守ることができるかがラテンの世界を好きになれるかどうかの分かれ目の1つかもしれない。
少しばかり荷物を運んできたので、それを整理してから引き上げよう。オーナーを見送り、洋服などをクローゼットに収納し、部屋を後に。念の為、部屋の鍵もちゃんと閉まるかチェックしようとしたら、渡された鍵でドアが開かないではないか!挿し口には入るが、どうやっても鍵が回らない。もはや力加減の問題ではない。何度やっても駄目だ。慌ててオーナーに電話して戻ってきてもらう。
一緒にいるときに確認すべきだった。10分ほどでオーナーが戻ってきてくれ、一緒に鍵をチェック。やっぱりオーナーの手にかかっても鍵が回らない。おかしいわねと首をひねりながら、カバンの中から取り出した別の鍵を試すオーナー。すると、何事もなかったかのように鍵が開いた。
あらっ、別の鍵を渡していたわ。はははッ。参った。最後の最後まで話題に事欠かないコロンビアでの家探し。入居後は何が待ち受けているのだろうか。
家探しの教訓
色々あったが、コロンビアでの家探しの過程で、コロンビアの文化的な一面も垣間見えたのと同時に家探しの教訓も得た。イギリスでアパートを探していた際、問い合わせた不動産屋や家主から全く返事が来ず無視された経験は何度もあったので、コロンビアで同じことが起きても驚きはなかった。
しかし、コロンビアの場合、応答はあるものの、なかなか事が進まないことが何度があった。なかなか家が決まらないのを見かねたコロンビア人の同僚は、家主は貸したくないけど渋々メッセージに応答しているだけだから、早くあきらめて次の物件を探した方がよいとアドバイスしてくれた。
メッセージのやり取りに淡い期待を抱かされ、賃貸契約の交渉の進展を期待するのは甘かった。いっその事、貸す気がないなら無視してくれた方がいいのにとも思うが、そこはコロンビア人の人柄の良さなのかもしれない。