パプアニューギニア最高峰 ウィルヘルム山登山(後編)

パプアニューギニア

パプアニューギニア最高峰・ウィルヘルム山への登山は、初日に高山病に悩まされながらも何とか標高約3,500メートルのベースキャンプに到着。翌日、早朝から山頂へのアタックを試みる話。

寝不足の中、午前2時30分出発

午前2時30分の出発 辺りは文字通り真っ暗

麓の村からベースキャンプまでの到着は、前回に紹介。

パプアニューギニア最高峰 ウィルヘルム山登山(前編)

山頂へのアタックは、午前2時に起床。前日は午後7時頃に寝床に着いたものの、体は疲れていたのにまだ夜早いせいか、あるいはマットレスが薄すぎたせいか、なかなか寝付けず。おまけに標高3,500メートルのベースキャンプは、夜はかなり冷え込んでいた。湯たんぽを持ってきておいて大正解だった。結局、2時間程度しか睡眠を取ることができなかったまま、出発の時間を迎える。

同僚が朝食のサンドウィッチを分けてくれたが、このちょっとしたパンを食べるのもきつい。睡眠不足のせい?あるいは標高のせいか?

夜中は大雨に見舞われたが、幸い出発した時点では雨は上がっていた。ヘッドライトを持っていなかったが、自宅から持参した非常用の手持ち懐中電灯が役立つ。標高に適応できたのか、昨日よりは体調はよさそうな印象を抱いた登山の序盤。しかし、暗闇の中の登山は足もとに余分な注意が必要なので、その分、余計に疲労が募る。

出発して間もなく、山頂到達時に掲げようと思って購入した、パプアニューギニアの国旗をベースキャンプに忘れてきたことに気付く。もはや引き返すのは合理的な判断ではないので諦める。

30分ごとに少し休憩を挟みながら進んで行く。雲が晴れた夜空を見上げると、見事な天の川が広がる。登山の運気が上昇してきたように感じられ、頂上まできっとたどり着けるだろうなという確信が生まれる。

しかし、現実はそうは甘くなかった。昨日は約5時間と言われた麓の村からベースキャンプまでの道のりを3時間で登ったので、同じく約5時間程度が見込まれるベースキャンプから山頂までも、もっと早く到着すると信じていたが、昨日のようにはいかなかった。

文字通り、登り登りの連続で足への負担が想像を超える。幾度なくガイドに頂上までの道のりはあと何時間と聞いたことだろうか。

山頂到達前にご来光

日の出が迫り、空に光が広がる

目標は、ウィルヘルム山の山頂で日の出を迎えることだったが、その前に徐々に空が明るくなっていく。懐中電灯が不要になり、登りやすくなったものの、時間的には、山頂で日の出には間に合いそうもない。

日の出に照らされオレンジ色に染まる大地

太陽が姿を現すと、山一帯が見事にオレンジ色に染められ、その美しい風景に思わず見とれてしまい、足の疲労を一瞬忘れさせられる。天気に恵まれたことに感謝。

ウィルヘルム山の周辺には50程の湖が点在するようで、丁度、眼下に大きな湖が1つ姿を現す。ガイドが、ベースキャンプの前の湖と教えてくれた。

ウィルヘルム山周辺には50もの湖が点在する

この時点で出発からすでに3時間。かなりの距離と時間を歩いてきたにも関わらず、ペースキャンプの傍の湖がとても近くに見えて、進んで来た距離がわずかしかないという失望に駆られる。

睡魔&空腹との闘い

ベースキャンプから山頂までの所要見積もり時間が5時間、出発から3時間経過したので、すでに半分は過ぎ、終盤に差し掛かっているはずだが、いかんせん、終盤の終盤にならないと、角度の問題から山頂の姿が見えないのが難点。目標地点が視界に定まれば、足取りも少しは軽くなるだろうけど、そうはいかない。

ガイドにあと何時間?と何度同じ質問をしたことだろう。しかし、無残にもその返答はいつも「あと1時間」。いやいや随分ともう歩いたので、もう少しなはず!適切な見込み時間を教えてくれないと、体力とペース配分ができない。

そうこうしているうちに、急激な眠気に襲われる。さすがに前日2時間ほどしかまともに寝ていないので、当然か。おまけ朝食も十分に摂取できなかったせいか、空腹感というより、体内のエネルギーが枯渇寸前になっている。

同僚の提案で休憩時に、スナックを補給。体中にエネルギーが行き渡るのを感じられるくらい、貴重な栄養補給となり、眠気も冴える。

よくやく山頂の姿が目の前に

ようやく姿を見せたウィルヘルム山頂

ガイドが言った「あと1時間」のその1時間が過ぎても一向に山頂に到着するどころか、山頂の姿させ見えない。後から付いてきていた別の2人の登山者はついにリタイヤしたようで、自分も同じような結末を迎えるのではないかという不安に駆られる。

しかし、その不安をかき消し、今できることである1歩1歩着実に歩みを進めることに集中。

すると、ガイドがあれがウィルヘルム山頂と指さして教えてくれる。ようやく目標が見えたことで、気力も湧いてきたのも束の間、山頂まではあと45分くらいかかると告げられ、一気に足取りが重くなる。

山頂までの最後の難関の登り

おまけに山頂までの最後の道のりは裏側に回り込むようなルートだが、目の前には、断崖のような景色が広がる。ロッククライミングができるポイントがあるくらい、その傾斜は急勾配。

ついにウィルヘルム山頂に到達

ウィルヘルム山頂

ガイドの手を借りながら、先に到着した同僚に遅れる事、数十分。ようやくウィルヘルム山頂に到達。言葉にできないくらいの達成感に満たされる。パプアニューギニアの国旗を忘れたことなどもはやどうでもよい。ベースキャンプからの所要時間は見積もり通り約5時間、午前7時30分に山頂に到着。

足はもはやがくがくの状態で、昨日の体調不良を考慮すれば、山頂まで到達できたのは奇跡に近いかもしれない。同僚がいなければ、とっくにあきらめていただろうから、その存在にも感謝。

山頂から広がるパノラマビュー

標高4,509メートルのウィルヘルム山頂だが、想像していたより寒くはない。ポカリスエットの大ファンという同僚と、山頂到達記念に、それを飲んで祝う。軽食を取りながら360度の山頂からのパノラマビューに見とれる。快晴とはいかないが、遠くの火山も見渡せて、30分ほどの山頂滞在を存分に楽しむ。

下山は天気との闘い

下山時には雲行きが怪しくなる

山頂までは5時間ほどの所要時間だったので、下りは3-4時間ほどと想像しながら、序盤は見覚えのある道のりを快調に下っていく。下山と言えど、時折、上り坂もあるのでまだまだ侮れない。

そんな心配を掻き立てるように雲行きが怪しくなり、昨日の大雨とまではいかないが、雨しずくがぽつりぽつり。

朝日を眺めた地点くらいまでは順調だったが、その後の道のりは、暗闇の中で登ってくたので、その景色がまったく記憶になく、初めて通る道のりのようで、足取りが徐々に重くなっていく。

水墨画のような山脈の合間を縫って進み、ベースキャンプの前の湖が目の前に広がった時点で、雨が本降りに。この湖、思いのほか広くて、ベースキャンプまでのあと少しのはずが、なかなか到着しない。

午前8時に山頂を出発してから約4時間でようやくベースキャンプに到着。2階への階段を上るのも足に堪える。

チョコレートなどを食べて、同僚とともに1時間ほど昼寝。これが疲労回復に一役買ってくれる。

ポーターがベースキャンプに到着したので、荷物を預けて、麓の村まで下る。行きは登り3時間ほどだったが、2時間ほどで下山。雨の影響でガイドすら足を滑らせてしまうほどだったが、無事にBetty’s Lodgeに戻ってくることができた。

正直、今までの登山で一番、体への負担を感じたきつい経験だったが、それゆえに1つ新たな壁を打ち破れたような充実感にも満たされた。

登山費用のまとめ

今回の登山にかかった主な費用は以下の通り。

  • ベースキャンプ宿泊費 80キナ(=約3,200円)/泊
  • ポーター       70キナ+チップ10キナ (=約3,200円)
  • ガイド        170キナ+チップ30キナ (=約8,000円)
  • Betty’s Lodge 宿泊費 350キナ(=約14,000円)/泊 (食事込み)            
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