パプアニューギニア最高峰 ウィルヘルム山登山(前編)

パプアニューギニア

パプアニューギニアに赴任中、挑戦してみたかったことの1つが、最高峰のウィルヘルム山への登山。標高4,509メートルの最高峰へは、高山病と闘いながら頂きを目出すことに。1泊2日のウィルヘルム山への登山、ベースキャンプまでの前編の話。

登山計画は慎重に

ウィルヘルム山の標高は4,509メートル、その手前の標高約3,500メートルにベースキャンプが設けられており、その山小屋に宿泊し、深夜に山小屋を出発して山の頂を目出す。山頂到着後、同日中に麓の村まで戻ってくるという1泊2日のプラン。

パプアニューギニアでは標高2,000メートル近いハイランドに居住しているため、ある程度の高山病対策が出来ていると判断して、1泊2日の日程を同僚と組んだが、首都のポートモレスビーやレイなどの沿岸部からの登山客は、標高に体を慣らすため、ベースキャンプに2泊するケースもある。

車でアクセスできる麓の村のロッジの標高は約2,800メートル、山小屋のあるベースキャンプとの標高差は約800メートル。この間の移動所要時間は約5時間。

さらに頂上まではベースキャンプから約5時間、ベースキャンプまでの下りに約4時間程度、さらに麓の村まで約2時間程度の下りがおよその所要時間の見積もり。

無理をせずに余裕を持った登山計画を立てたいところ。

降雨の登山スタート

Betty’s Lodgeのお出迎え

任地から登山の麓の村にあるBetty’s Lodgeへ向かう。このロッジは、JICAのプロジェクト支援を受けたニジマスの養殖が実施されている。11時過ぎにロッジに到着。このロッジの管理人でもあるベティさんには、同僚と共に登山計画について以前に会って相談したことがあったので、久しぶりの再会の喜びを分かち合う。

ロッジの周辺には霧がかかり、絶好の登山日和とはいかない天気だが、この辺りでは年間を通じて、このような天気のようだ。

持参した昼食を食べた後、正午にロッジを出発。一瞬晴れ間が見えたのも束の間、小粒の雨が降り始める。同僚とともに、それぞれにガイド、ポーターを付ける。

いつもスカッシュで共に汗を流す同僚とは、同じくらいの体力と思い込んでいたが、登山のペースが思いのほか速く、全くついていけない。おまけにオーバーペースと、高山病の影響からか、体の調子がすぐれない。

同僚にペースを落としてもらうようにお願いするも、ゆっくりとしたペースについていくのも大変なくらい。このような状態で4,000メートルを超える山頂まで辿りつけるのだろうか。不安が募る。

ガイドからは、同僚のペースは気にしないで、自分の楽なペースで登るようにアドバイスされ、さらに、体への負担が楽になるようにと、ガイドがリュックを代わりに持ってくれることになった。

荷物がなくなった分、体は軽くなったが、心肺機能への負担はそれほど変わらず。思ったほどに足が快調に進まない。その足取りを重くするかのように、雨足も強まる。

ベースキャンプまでの登山道に現れた滝

こんな調子で5時間も歩けるのだろうか。後30分歩いて調子が悪くなったら登山を断念するか、いやベースキャンプまでは何とか辿り着こうと色々な思いが錯綜する。同僚とではなく、一人の登山だったらとっくにリタイアしているだろう。

体の状態に、悪天候、登山中に写真を撮る気力も全くなくなってしまい、唯一、休憩も兼ねて立ち止まった滝の写真だけが携帯のメモリーに残った。

標高に適応するのに数時間

ロッジを出発してからは、ずっと山の中の登り坂だったが、2時間くらいたったころだっただろうか、ヒカゲヘゴが生い茂る開けた草原にたどり着く。

その風景は圧巻だったが、雨足も強まっていたので、携帯のカメラを出すのも億劫になり、その景色は記憶の中だけにとどめることに。

その景色の移り変わりがターニングポイントになったのか、あるいは、標高に少し体が慣れたせいか、心肺の負担がすっと軽くなったような気がした。

この時点でようやく、今夜の宿となる山小屋まではなんとかたどり着くことができるだろうという確信が生まれた。

ベースキャンプの山小屋に無事着

Yaundo湖畔 

それまでの登りの登山道とおさらばして、平坦な道のりが続いていくと、目の前にYaundo湖が姿を現す。小屋らしくものが点在している風景に、ようやくベースキャンプにたどり着いたことに気付く。

時刻は午後3時。ロッジを出発してから約3時間でベースキャンプに到着。

ベースキャンプまでは5時間ほどかかると説明されていたので、かなりのハイペースで登ってきたことになる。

一夜を過ごす山小屋

やはりオーバーペースが序盤の体の不調を引き起こしたのだろう。

山小屋に着くころには、汗と雨で肌着は不快なレベルを超えるくらい濡れていたので、早速“チェックイン”を済ませ、着替える。

この山小屋の宿泊料は80キナ(=約3,200円/2023年9月現在) 

翌日に備えて、濡れたジャケットとアウターは、焚火の近くに吊るしてもらい乾燥させる。

山小屋は、2-3の部屋に区切られているが、作りが簡素なので、話し声は筒抜けで、廊下を人が歩けば、建物全体がきしむくらいの脆弱さ。部屋の中には、薄いマットレスが敷かれているのみ。

文字通り雨露をしのぐのみで快適さは期待できない。雨で冷えた体を、お茶で温める。同僚が持参してくれた食事を夜ご飯に頂く。

トイレは山小屋から少し湖の方に向かった別の小さな小屋に向かわなければならない。夜中にトイレに行くことは極力避けたい。おまけに雨のせいで、道のぬかるみが半端ない。

湖畔沿いには、山小屋に宿泊せずにテント泊する登山客の姿も。散歩がてらに少し湖の周辺を歩いていると、翌日のパプアニューギニアの独立記念日の祝日に登山にきたというゴロカからのグループに遭遇。互いに明日の登山の健闘を祈る。

明日は午前2時30分にベースキャンプを出発して山頂に向かわなければならないので、日が落ちる頃に体を休める。(後編へ続く)

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