ニュージーランドを旅した期間中、フランスではラグビーのワールドカップ2023が開催された。旅行中は、日本代表の試合の行方とともに、旅先のニュージーランド代表の勝負の行方もチェック。
All Blacksの愛称で親しまれるニュージーランドのラグビー代表は、過去3度ラグビーワールドカップの優勝経験がある世界屈指の強豪チーム。今回のワールドカップでも決勝まで駒を進め、運よくニュージーランド旅行の滞在最終日が、その決勝戦の日と重なり、ニュージーランドのラグビー熱を体験すべく、バーでのパブリックビューイングに繰り出した話。
オールブラックスはNZの顔
日本でもワールドカップでの代表チームの活躍もあり、人気スポーツとなってきたラグビーだが、ニュージーランドでの人気は桁違い。
旅行期間中、街中の広場でラグビーを楽しむ子供たちの姿を見かけることもしばし。その人気を象徴するかのように、クライストチャーチ空港内には、オールブラックスの公式ショップも展開されている。
週末早朝のバーでパブリックビュー
フランスとニュージーランドとの間の時差の関係上、決勝戦の試合開始はNZ時刻では日曜日の午前8時。
地元の人にワールドカップについて尋ねた際に、決勝戦の日は、どのバーも早朝から営業を開始して、パブリックビューイングが楽しめると教えていただいた。
4年に1度、しかも旅行期間中に、その訪問国であるニュージーランドのオールブラックスが決勝を戦うのに遭遇するチャンスはこの先の人生ではもう訪れないかもしれないだろう。この機会を見逃すわけにはいかない。
とは言え、週末の早起きはやはり苦手だ。試合開始前にバーに入店したいところだったが、少し遅れてしまう。
バーに入店すると、予約あり/なしでエリアが分かれている模様。予約ありのゾーンでは朝食のビュッフェが提供されており、食事をしながらラグビーの試合観戦ができるようだ。
お腹は空いていなかったのでコーヒーだけ注文しようと思ったが、コーヒーだけの注文はできず、ビュッフェのチケットを購入する必要があるということだった。
仕方なく、コーヒーはあきらめて予約なしのエリアに進む。
早朝からビールで試合観戦
既に試合は始まっており、週末の早朝という時間にも関わらずバー内は人で溢れかえっている。おまけにビール片手にもう出来上がっている人の姿も。皆、オールブラックスのゲームの行方を固唾をのんで見守っている。
老若男女問わず、パブリックビューイングを楽しんでいる様子からも、ラグビーあるいはオールブラックスがニュージーランドの社会にいかに浸透しているかが伺える。
対戦相手の南アフリカはスプリングボクスの愛称で親しまれるチームで、前回大会の優勝国。さらに、オールブラックスと同じくワールドカップで過去3回の優勝を誇り、今大会は4度目の優勝とともに連覇を狙う。相手にとって全く不足はない。
善戦及ばず準優勝
試合は終始、スプリングボクスのペースでリード。ニュージーランドでのラグビー熱を体感するためにバーにいるだけの人間と違って、地元の人は明らかにラグビーに精通しており、戦略を含めて試合の展開を見守っている。
よいプレーには拍手が沸き起こる一方、ミスにはブーイングではなく「Ohhh」と残念がる声がバーに響き渡る。拮抗する試合展開に、観客のビールもどんどん進んで行く。ふと冷静に、まだ日曜日の午前中であることを認識する。
後半に入り、オールブラックスのトライが決まりスプリングボクスに1点差に迫ると、盛り上がりは最高潮に。トライに続くコンバージョンキックで逆転に期待がかかったが、無残にもキックが外れ追加得点ならず。勝利の女神に見放されたかと思ったが、さらにペナルティーゴールのチャンスが巡ってくる。
バーにいる全員が息を潜めて祈るような気持ちでボールの行方を見守る。逆転を狙ったキックはポールをそれて得点ならず。せっかくのチャンスを逃してしまったことに対する、怒りや罵りが起きてもおかしくない状況だが、アルコールが入っている観客でさえ、キックの失敗を受け入れ、温かく見守る姿に、オールブラックスへの尊敬の念が感じられ、パブリックビューイングで感動させられた一幕だった。
試合はスプリングボクスがリードを守り、大会連覇と4度目の優勝を達成。オールブラックスの敗戦に落胆している人もバーにはいたが、試合が終われば、バーはいつもの社交場の姿に戻り、ビールを片手に、先ほどまでは試合に没頭していた人達も、友人や知人とおしゃべりを楽しんでいた。
4年に1度のラグビーのワールドカップで、オールブラックスが決勝戦を戦う瞬間に、ニュージーランドでパブリックビューイングが出来たことは、今旅のおまけの思い出となった。