屋久島旅 Day3 レンタル自転車で屋久島一周サイクリング

屋久島

屋久島旅最後のアクティビティは、自転車で島を一周。と、計画していたところだが、島の西部林道が台風の影響で橋が流出したため通行止め中。(現在は通行止め解除済

残念ながら島一周とはならなかったが、サイクリングで屋久島を半周した話。

時計周りか反時計回り

一部区間が通行止めとなっている限り、島を一周できないので時計回りか反時計回りかルートを決めなければならない。観光協会の方や、自転車のレンタル屋さんなどの意見を参考にして、平中海中温泉と大川の滝を巡れるよう、ゲストハウスのある安房から時計周りで通行止めとなっているポイントまで行って戻ってくるプラン。

自転車は前日にスポーツバイクを24時間3,300円でレンタル済。

午前8時にゲストハウスを出発。平中海中温泉は干潮の前後2時間ほど潮が引いて入浴できるということなので、午前の干潮時間帯にたどり着けるように自転車をこぎ始める。

快晴の天候も強風が行く手を阻む

教会・鳥居、山のコントラストに魅せられる風景

前日にゲストハウスのある安房から尾之間温泉までは自転車で行き来したので、そこまでの距離感は体が覚えている。途中にカフェらしき場所もあったので、そこで朝食を食べよう。

道中、千尋の滝や屋久島ボタニカルリサーチパークなどの見所もあるようだが、本日の目的は平中海中温泉と大川の滝に絞り、後はサイクリングを楽しむこと。

ありがたいことにこの日も天気は快晴。日差しを遮るためにサングラスが必要なほど。

安房を出発してから尾之間温泉までは既知のルートなので、実際の距離ほどは長く感じなかったが、気温のせいか、すでに汗ばむ。おまけに朝食を食べようと思っていたカフェは10時オープン。さすがに待つのは時間のロスになるので、サイクリングを継続。これが後にエネルギー切れ寸前までの状態になってしまった要因。

バス停をいくつか通過するごとに給水を設けながら先に進む。

尾之間から平中海中温泉までは車だと10分ほどなので、自転車だと30分くらいと見込んでいたが、なかなか到着しない。

ようやく平中海中温泉の案内看板が現れ、出発から約90分後、9時30分に到着。

平中海中温泉、訪日外国人とおしゃべりで長風呂に

干潮までまだ少し時間があるせいか、他の入浴客および観光客の姿は見当たらない。

脱衣所などは設置されていないので、温泉の周辺で着替えを済ませ、かけ湯をして入浴。

干潮で姿を現した平中海中温泉

石で囲まれたスペースが3か所あるが、それぞれ温度が違っていて、好みの湯加減を選択できる。スペースはそれほど広くないので、3-4人が一度に入れるといったところ。

海から押し寄せる波を眺めながら入浴

ここまでのサイクリングで汗ばんでしまったので、温泉でさっぱりできるのは極楽。おまけに足の筋肉の疲労も幾分癒される。

入浴してしばらくは他の入浴客がいなかったが、丁度、干潮の時間になるころには、いくつかのグループや旅人がやってきた。中には、入浴はせず、写真だけを取って帰っていく人たちも。

この先の道のりもあるので、ある程度のところで切り上げて、先に進まねばと思いつつ、この青空の下、自然のインフィニティ温泉をいつまでも満喫したい気持ちが葛藤し始める。

そんな折、イギリス人カップルが入浴して来て、日本食から日英関係、彼らの日本旅についていろいろと話し込んでいると、1時間以上も入浴していた。さすがにまずい。まだまだ先は長いので10時50分、平中海中温泉を後に。

強風に折れる心

温泉で心機一転、心も体もリセットされたので、サイクリング再スタート。しばらくは、快調に自転車をこぎ続けるが、湯泊から中間の区間は、何もないと言っても過言ではないほど、単調な道が続く。

まだ朝ご飯を食べていないことに気づき、どこかお店があれば入ろうと思うにも、お店すら見当たらない。徐々にエネルギー切れになってくる。

力が沸いてこないせいか、自転車をこぐ勢いも弱まり、海から吹き付ける風に、変則ギアではもはや対応できない。いくつかもポイントでは自転車から降りて、押して歩くしかなかった。

なぜバイクではなく自転車を選んだのか。自然を感じながら自力で進むサイクリングは大好きだが、さすがにこの強風では楽しむ余裕すらない。自転車よりもむしろ歩いたほうが早いのではないかというスピードでしか進んでいない。

後で、地元の方に聞くと3月のこの時期は、風がきつい季節のようだ。

この地点で、西部林道の行き止まりポイントまでたどり着く目標が消え、心が折れ始める。強いては大川の滝までも行けるかどうかという心理状態に。

それでもなんとか栗生まで到着。学校や郵便局が目についたので、食事ができる場所があるだろうと期待が高まる。お蕎麦屋さん・手打ちそば松竹を発見。

もちろん、グーグルマップで調べればすぐなのだろうが、こうしてサイクリングの途中に巡り合うのが旅情を掻き立ててくれる。

人生初のトビウオ寿司

屋久島の水でしめるお蕎麦にも気を引かれたが、なによりメニューから目に飛び込んできたのはトビウオ寿司。これまでの人生で食べた経験のないお寿司を注文することに。

見た目は手まり寿司のような丸みのあるフォルム。トビウオそのものはクセもなく、あっさりとしていてあまり魚らしい青臭い味わいもない。その代わりに印象にのこったのはその歯ごたえ。かなり弾力のあるしっかりとした身で、ランチの7貫だけでなく、もう一皿食べれそうなくらい。

朝から何も食べていなかったので、体にエネルギーが蓄えられるのが十分に感じられた。これなら大川の滝までは行けそう。勢いよくこぎ出すと、さきほどのお蕎麦屋さんにタオルを忘れたのに気が付く。どのみち、通行止めで島は一周できないので、帰りに立ち寄ればいいだろう。

圧巻のスケール大川の滝

栗生から大川の滝までは約4キロ。この区間は、文字通り何もない。ただ一直線の道路が延々と続いている。多少の起伏はあるので、下り坂では、エネルギーをセーブ。

昼食休憩がなければ、とてもではないがエネルギー切れを起こしていただろう道のり。

橋を駆け抜けていると、山肌の一部が目に入って来る。かつての土砂崩れの後かなにかかと思いきや、どうやら水が流れている。あれが目指す大川の滝か?

これまで、イグアスの滝、ビクトリアの滝を訪れた経験から、あまり滝自体には感動することは少なくなってきたが、それでも期待が高まるスケール。

滝の近くでサルの群れに遭遇し、威嚇を受けるが自転車で素早くスルー。

ゴーと落下する水が滝壺に打ちつける音が響き渡る。自転車のスピードを緩めて、目の前に広がった世界に圧倒される。

空を見上げる角度くらいでないと、水が落ちてくる始点が確認できないほどの高さ。辺りに漂う水しぶきにマイナスイオンが充満する。

世の中のすべての雑音を消し去って、水の音だけが耳の奥から入り、体内で鼓動していくような感覚。

お弁当を持ってきて、この圧巻の大川の滝を見ながら、ここでランチという手もあったな。途中、強風にあきらめそうになったけれど、こんな壮大な自然の風景が待っていたとは。

滝からパワーをもらい、もしかしたらこの先の行き止まりポイントまで行けそうな気もした。特に何かがあるというわけではないが、この西部林道は国立公園内を走っており、その自然の中をサイクリングできたらと考えたが、帰る道のりと残りの体力を考慮して、今回はここで引き返すことに。

帰り道は頑張ったご褒美三昧

そびえ立つ山を眺めながらのサイクリング

復路のスタート。往路ではあれだけ、強風に悩まされた栗生と中間の区間だが、その風がそのまま追い風となり、ペダルをこがなくても進むほどの勢い。

途中、昼ご飯を食べたお蕎麦屋さんに寄り、忘れ物を確認。多分見つかるだろうと思っていたのに、お店の方は見当たらなかったという。背後の厨房に、まさにその忘れたタオルがあり、それを指さす。すると、「お店の台拭きと思っていた。ちょっと使ってしまった」と苦笑い。何はともあれ、一応タオルも戻ってきたので、そもままサイクリングを続ける。

大川の滝を午後1時に出発してから1時間ほど。午前中に朝ごはんを食べようと思っていたカフェが開いている。やくしま名産のたんかんのスムージー。「たんかん」はいままで見たことも聞いたこともないフルーツ。たんかんの響きは日銀の統計の「短観」にしか頭の中で変換されないが、ぽんかんなど、柑橘系の仲間。

もちろん、新鮮なフルーツを使用しているので、このスムージー自体はおいしいのだが、何よりもこの強風の中を一生懸命サイクリングしたせいか、味わいの感じ方が別次元のレベルに達している。

スムージーを飲んでから再び自転車で走ること30分、いや30分しか走っていないのに、ジェラート屋さんが見えたので、また休憩。今日はサイクリングで十分すぎるカロリーを消費しているので問題はない。心ゆくまで食べたいものを楽しむ。ご褒美三昧。

これだけ甘いものを摂取したので、エネルギーは十分。その上、追い風が味方してくれたおかげで、ずいぶんと時間も節約でき、営業時間内に間に合えば行こうと考えていた本坊酒造へ。

屋久島の蔵では蒸留はしていないが、駒ケ岳や津貫で蒸留した原酒を屋久島で熟成させているということだ。世界的にも評価がうなぎ上りのジャパニーズウィスキーは、同僚のお土産にも喜ばれるので、1本購入。少しだけリュックが重たくなってしまったが、残された道のりはあと僅か。

午後4時20分、自転車返却。ゲストハウスへの道のりを歩いていると雨が降り出したので、丁度いいタイミングで帰って来れた。

屋久島の無人販売

果物が100円というお値打ち

自転車で走っていると、時折目についたのが無人販売。治安のよい日本ならではの仕組みで、屋久島では果物や野菜を中心に、道路脇の小屋で販売されていた。

往路は、さすがに荷物が重たくなるとサイクリングがより一層厳しくなるので、いくつか目星をつけておいたのだが、午後に通過する頃には売り切れが続出。島の方の重要な買い物インフラとして機能しているのだろうか、あるいは観光客が新鮮さと安さに魅せられて買っていったのだろうか。

やきいもの無人販売

果物や野菜は、屋久島に限らず地方に出向いた際に見かけることはあるが、屋久島ではやきいもの無人販売を発見。何やらデバイスも付属しており、電子マネーでも決裁できるようになっている。無人販売というアナログにテクノロジーが融合したユニークな例。

残念ながら、通行止めのため屋久島をサイクリングで一周するという目標はかなわなかったが、それでも半周する中で、大自然を間近で感じながら、思い思いの場所で立ち止まって、風景を観察できるサイクリングは、乗用車では味わえない旅のスタイル。通行止めが解除された今、屋久島を訪れる方には、縄文杉の訪問に加えて、島内一周サイクリングにも挑戦してみてほしい。

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