ベネズエラに赴任した2024年、着任月は連休があったので、近郊の街へ日帰りトリップに出かけたが、その後は平日は地方への出張、週末は体を休めるために自宅で過ごす時間が多くなり、旅からどんどん遠ざかっていた。さすがにこのままでは、住んでいる場所以外を知ることなくベネズエラの任期が終わってしまう。
首都カラカスへの異動を機に、ベネズエラ国内旅行を再開。カーニバルの休暇を利用して、ドイツ人入植地のコロニアトバールへ。なにかとカオスな印象が拭えない南米において、ヨーロッパの雰囲気に包まれた、整然とした街並みに、ベネズエラという異国で、さらに異国の情緒を楽しむ日帰りトリップの話。
山間部を駆け抜けるドライブ
コロニアトバールは、カラカスの中心地から車で約2時間弱の距離。ホテルで1泊するという選択肢も俎上に上がったが、旅行したのはカーニバル休暇ということで、混雑を適度に回避すべく日帰りでさっさと引き上げることに。ベネズエラ人の同僚からいくつかのおすすめスポットと、できるだけ午前中の早い時間帯に到着するようにアドバイスを受ける。

カラカスでの運転はまだ慣れないが、グーグルマップをナビ替わりに出発。いつもながらに高速道路の分岐点で戸惑うことが幾度とあったが、無事に切り抜け、上り坂が続く一般道へ。蛇行した山道が続いていくが、道が枝分かれする地点はないので、ひたすら前へ前へと進んで行く。
予定では自宅を午前7時に出発するはずが、南米のちょっぴり時間にルーズなところに影響されてか、30分ほど遅れていたものの、まだまだ交通量は少ない。

山道のカーブを曲がっては、時折、眼下に美しい谷の景色が広がる。片側一車線の道のりは、いくら交通量が少ないとはいえ、写真を撮る為だけに駐車するのは憚れる。おまけに、ビューポイントらしき地点は整備されておらず、車の運転を進めながら、朝靄が漂う裾野のラインに見とれる。唯一、ベンチが設置された、展望ポイントらしきところで、一旦停車して、体のストレッチと、パノラマの景色を写真に収める。目的地まで半分くらいの距離は過ぎたようだ。
旅人を引き付けるヨーロッパの建築様式

コロニアトバールの町が近づくと、カラカスでは見かけない、欧州の建築様式の家が散見される。
同僚に教えてもらった、町の中心の公共駐車場へ。到着した午前9時過ぎの時刻帯は、まだまだ閑散としていた。
駐車すると、整然とした街並みにテンションが上がり、早速、街歩きをスタートさせたいところだが、空腹感に襲われる。朝食を済ませてから出発したが、車の運転に神経を使ったせいなのか、疲労と共に、甘いものを欲している。

目に付いたカフェへ。メニューはドイツ国旗の配色が施され、店員もスペイン語を話しているが、ドイツ移民の血を引くであろう容姿。
ドイツの朝ごはんは全く思い浮かばないが、甘いものを欲する体にワッフルを注文。お値段は9米ドル(=約1,400円)と、観光地プライス。

栄養を補給したら、街歩き開始。コロニアトバールの町自体はこじんまりとしているので、2、3時間もあれば十分に見所は回れるようで、さらに手際よく観光スポットを巡るトゥクトゥク以上、バン未満の大きさの車がそこらじゅうで観光客を待機しているので、この交通手段を使うのも一手。
小さな町なので、道に迷うはずはないと過信したのがいけなかったのか、町のシンボルとなる中心地の教会が見当たらず、どんどんと山の景色は近づくにつれて、さすがに方向音痴センサーが作動して、地元の人に尋ねて、軌道修正。

朝食を摂って、道に迷っている間に、随分と観光客の姿が目立つように。宿泊している人たちも、そろそろ朝の観光を始めた模様。
ようやくコロニアトバール教会の塔に到着。まさにヨーロッパの雰囲気そのもの。たまには、こうしてカオス溢れる南米の街並みから、整然としたヨーロッパ調の風景を味わうのは、束の間の癒し。

教会の三角形の屋根の内部は、木のぬくもりが感じられる天井と、グレーの壁のコントラスで訪問者を迎えてくれる。派手な印象を与えないステンドグラスも施され、遠い欧州大陸からやって来た入植者たちにとって、集いの場として重要な役割を果たしてきたことが伝わって来る。

教会を後にして、来た道を引き換えると、開館時間であるはずの午前10時頃に通り過ぎていた際には閉館していた博物館がオープンしていたので入館。入館料は60ボリーバル(=約130円)ほどだったと記憶。

欧州大陸からの移民が、この地に入植者としてどのように街を築き、コミュニティが形成されていったのか、こじんまりとしたスペースながら、歴史的に貴重な史料もあり、入館料もお手軽なので、訪れる価値はあり。
新鮮な野菜に果物が並ぶ青空市場

街歩きをしていると、あちらこちらに露店や青空市場に出くわす。連休中ということもあり、賑わいに拍車がかかる。
目に飛び込んでくる色とりどりの野菜や果物は、その色彩からも鮮度が伝わってくる。

野菜もさることながら、コロニアトバールの名産はイチゴ。ほかのベリー系の果物も並ぶ。なにより、1つ1つの実がとても美しい。
お値段は1パック3ドル(=約450円)とスーパーでの値段とあまり変わらないので、お買い得感はないが、町の畑やビニールハウスで収穫されて店頭に並んでいるので、長い距離を輸送して、その間に果物が傷むという工程が省かれているせいか、高品質。おもわず、イチゴとベリーを購入。
同じように、両手いっぱいに買い物袋をぶら下げる観光客の姿が目立つ。近郊に住んでいる人ならば、新鮮な野菜をここで購入するのも一手。
ランチタイムには一層の混雑

時間の経過とともに、徐々に観光客の姿が増えてくる。車やバイクで訪れる人がほとんどなので、小さな町の中心地は車で溢れかえる。駐車場を探しているのか、あまりの混雑に引き上げようとしているのか。いずれにしても、やはり早朝に到着しておいて賢明だった。

その証拠に、朝はガラ空きだった駐車場は満車状態で、入り口にはロープが張られ、入場を制限している状態。あまりの人の多さに、世界各地で問題となるオーバーツーリズムを想起させられる。
この混雑を避けるべく、このまま引き上げようとも考えたが、同僚から混雑したときのおすすめスポットを教えてもらったので、そちらに向かおう。
同僚によると、町の中心部にあるHotel Selva Negraという宿泊施設内にあるカフェは、宿泊客以外でも利用することができ、あまり混雑していないということだ。

コロニアトバール教会の塔から少し坂を下ったところが、ホテルセルバネグラ。宿泊客以外の敷地内の駐車を阻止すべく、係員が配置されているが、歩行者は目を付けられることもなく、敷地内に入り、そのままカフェへ。
少し開けたスペースに、ホテルそのものもヨーロッパ建築で、趣を一層、掻き立ててくれる。

施設内の設備は不明だが、この雰囲気ならば一泊してみるのもいいかもしれない。そんな思いを巡らせながら、カフェのコーヒーを頂く。天気にも恵まれ、絶好の旅日和。
このカフェは穴場のせいか、中心地の賑わいの割には閑散としていて、のんびり過ごせるのがよい。この場所を教えてくれた同僚にお礼を言わなければならない。
つい先ほどまでは、中心部の混雑具合から、早々にも帰宅の途に就こうと考えていたが、静かな環境でコーヒーを飲んでくつろいでいると、少しエネルギーが沸いてきた。
車の運転があるので、ドイツ式ビールを楽しむわけにはいかないし、ドイツ名物のソーセージもそれほど好みではないので、どこに向かうべきか。
オリジナルワインを製造しているところがあるようなので、お土産として持って帰ろう。

坂を上り歩いて向かったが、どうやらワイナリーのような場所は閉まっているようだ。近所の人がそう教えてくれた。
結構な坂を上ってきたのに残念。この上り坂があるので、歩くよりも、上記の交通手段で、町の中を巡るのが合理的なのかもしれない。しかし、街歩きには街歩きのよさがあり、車では一瞬で過ぎ去ってしまうような何気ない景色にも目を向ける事ができる。

結構な距離を歩いたにも関わらず、目的のワインにありつけなかったので、疲労がより一層募り、ここは引き上げるサインだろう。
駐車場に車を取りに戻ると、駐車料金は4米ドル。手持ちには1ドル札3枚か、5ドル札1枚しかない。後者を手渡すとお釣りがないと言われてしまう。1ドルのお釣りもないのか…。後は3ドルしかないと伝えると、駐車時間が短いので3ドルにまけてあげるということに。粋な計らい。

車に乗り込み、町を後にする前に、外れにあるChocolaticoに寄ってから帰ろう。さすがに中心地から距離があるので、ここを訪れる人は少ないと高を括っていたが、大間違い。
車を停めるスペースを心配しなければならないくらいの賑わい。店内は、チョコレートの販売や、ホットチョコレートなどのイートインも可能。販売されていたホワイトチョコレートの色味が黄色がかっていたので、その理由を尋ねると、製造した際の牛乳の品質がよくなかったみたいと、正直な返答。それでも製品化して販売しているところにあっぱれ。
チョコレートラバーとして、板チョコとナッツがちりばめられたチョコレートを購入。

板チョコは5ドル、もう一方は2ドルとなかなかのお値段。
店内の余りの人の多さに、引き際を悟る。4時間ほどの滞在だったが、コロニアトバールのヨーロッパの雰囲気を存分に堪能。南米にいながらにして、ちょっぴり欧州気分を味わい時には、コロニアトバールが選択肢の1つとしてお勧め。