スイス到着後、6年ぶりに友人と再会。時差ボケの影響もあり目がさえすぐに眠りにつけなかったため深夜まで話し込む。久しぶりに会った興奮から、話が弾み、手土産を渡すのを忘れてしまい、翌朝、お土産を取り出すべくスーツケースの鍵を回すと鈍い音が鼓膜に伝わる。
時差ぼけのせいか、事態がよく呑み込めない。鍵が開かないどころか、鍵そのものが折れていることに気づいた。ロストバゲージを想定して、1日分の着替えは、バックパックで別途携帯してきたが、お土産がスーツケースに閉じ込められたまま。しばらく、お宅に宿泊させてもらうので、手ぶらという訳にはいかない。
グローブトロッターはスイスにショップなし
愛用するスーツケースはグローブトロッター。イギリスのブランドなのでスイスにもショップがあれば、修理の依頼をできるかもしれないと淡い期待を抱いたが、残念ながらスイスの周辺国のフランス、ドイツ、イタリアには直営店があるものの、スイスにはない。
解決策の手立てを失ってしまい、友人に相談。手際よくスーツケースの修理屋さんを調べてくれ、荷物が詰め込まれたスーツケースを持ち込むことに。
恐るべしスイスの物価高
友人宅の隣町に修理屋さんがあるようで、車で向かう。店舗ではなく、自室でビジネスを営んでいるため、集合住宅の一角で、年配の方と落ち合う。友人にドイツ語で状況を説明してもらい、折れた鍵を手渡す。修理できるかどうかは現段階では不明だが、夕方までに連絡するとのことで、スーツケースを預ける。
日中、観光を楽しんでいる間、友人の携帯にスーツケースが無事に開いたとの連絡が入る。ほっと胸をなで下したのも束の間、修理代金は何と150フラン(約21,500円)。恐るべしスイスの物価。支払いは現金のみ。
残念ながら手持ちの現金は70フランほどしかなかったので、友人に建て替えてもらうことに。
修理は鍵を繋げただけ?
2万円も修理代金を払うのであれば、鍵を壊して中身を出し、新しいスーツケースを買うもの一手かもしれないが、グローブトロッターのスーツケースを破壊して手放す気にはなれず。
スーツケースをピックアップしに、午前中に訪れた集合住宅に向かうと、今度は年配の紳士ではなく、2メートルは裕に越えた身長に、これでもかとタトゥーが彫り込まれた青年と、あまりにその印象が強かったせいか、全く特徴が記憶に残らなかったもう1人と、2人でスーツケースを持って現れた。
2万円もかかった修理はいかほどのものかと思ったら、鍵を手渡され、折れていた部分が結合されている。グローブトロッターの鍵の特徴である、先端に円形のデザインが施された姿は失われてしまった。
鍵そのものを取り換えたのかと思いや、どうやら折れた鍵を結合させただけの修理のようだ。おまけに、スーツケースの左側の鍵は、残念ながら機能せず。それでもスーツケースが開いたので一件落着。
スイス到着後、思わぬトラブルに巻き込まれたが、修理屋を探し、車を出してくれた友人がいなかったら、どうなっていたことか。スーツケースの中身は、物色されることもなく、無事に友人にお土産を渡すことができたが、この手土産では少々、割に合わないような気もした。
それでも友人は「朝、重大な問題が起きたと言われたときは何かと思ったけど、無事に解決できてよかった。それにしても、あのタトゥーの入った、大男、いかつかったね」と笑っていたので、共通の旅のおもしろ話がまたひとつ増えたというにしておこう。